FRBのパウエル議長は9月23日の講演で、「短期的な物価は上振れのリスク、雇用は下振れ方向のリスクに偏っている」と指摘。「リスクのない道はない」と難しさを強調。また、先週のFOMCで利下げ決定後も、「政策スタンスは依然、やや景気抑制的だ」との見解を示し、追加利下げの余地が残されていることを示唆したものの、利下げ後の政策スタンスは「良い位置にある」と述べました。

インフレに関しては、トランプ米政権の高関税政策により、モノの価格上昇が「インフレの押し上げをもたらしている」と分析。ただ、幅広い物価圧力とは言えず、おおむね高関税を反映したものだと述べております。一方、住宅を含めサービス分野でのインフレ鈍化は続くと予想。「合理的な基本シナリオを踏まえれば、インフレにおける関税に絡んだ影響は比較的短期にとどまる」と明言しました。

講演後の対談で、10月の次回会合に向けて、経済指標を注意深く精査すると強調。「政策が適切な位置にあるかを問い、そうでなければ動かす」と述べ、データ次第で判断する従来の姿勢を示しております。

雇用最大化と物価安定という二大責務(デュアルマンデート)に対するリスクを巡っては、「同等にみていく必要がある」と言明。政策運営方針は、トランプ米政権の高関税政策によるインフレ再燃と雇用悪化リスクの「両にらみ」であることを明らかにしました。また、資産価格の目標はないとしたものの、「株価は相当高い」と指摘しております。

◆ベッセント米財務長官、次期FRB議長候補10人との面談を来週末までに完了

ベッセント米財務長官は9月22日に、パウエルFRB議長の後任候補者11人のうち、現FRB理事や地区連銀総裁を含む10人との面談を来週末までに終える予定とした上で、来週以降に候補者の絞り込みを開始すると述べました。

自身がFRB議長候補に残っていることは改めて否定し、「トランプ米大統領は財務長官としての私の役割を高く評価しており、私も満足している」と語っております。

◆ミランFRB理事、適切な政策金利は「2%台半ば」

FRBのミラン理事は9月22日にNYで講演し、「FRBの金融政策は極めて景気抑制的だ」と分析。「引き締め過ぎ」な水準のままにしておくのは、「不必要なレイオフと失業率上昇を招くリスクを冒す」と警告。トランプ米政権による移民政策の変更などで、中立金利水準が「強く下押し」されているとの見方を示した上で、適切な政策金利は「2%台半ば」とし、現行水準はそれをほぼ2%も上回っていると懸念を示しました。

ミラン氏は就任直後の参加となったFOMCで0.50%の利下げを主張し、0.25%下げに反対票を投じました。講演後の質疑応答で、「中立金利の水準へ速やかに近づけることが必要だ」と述べ、「3会合連続の0.50%利下げが適切だった」と強調。0.50%の利下げは「パニックではない」と述べております。また、経済見通しなどが変わらなければ、10月の次回会合でも0.50%利下げを主張する考えを示しました。

米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を辞任せずに休職したミラン氏を巡っては、政権からの独立性が懸念されていますが、ミラン氏は「トランプ氏が私にある特定の金融政策設定を求めたことはない」と言明。「トランプ氏は金融政策に関する自分の見方を述べることが出来る」としたものの、政策判断では「自分の分析に基づき、自分で決める」と述べております。また、自身が広めた国際協調によるドル高是正構想「マールアラーゴ合意」について、提唱や支持をしていないと語っております。

◆FRB高官の発言

・FRBのボウマン副議長(金融規制担当)は9月23日の講演で、先週のFOMCで0.25%の利下げが決定したことについて、労働市場の脆弱さを踏まえれば「7月会合で始めるべきだった」としたものの、支持したことを明らかにしました。雇用情勢の悪化が続くなら、「より速やかで大幅な政策調整の必要がある」との見解を示した上で、9月会合を「政策金利を中立金利へ引き下げる最初の一歩とすべき」と強調。追加利下げの可能性を示唆することで、「長期金利が抑制され、経済を下支えすることができる」と訴えております。

・今年のFOMCで投票権を有するシカゴ連銀のグールズビー総裁は9月23日に、CNBCテレビとのインタビューで、FRBの現行政策金利水準は「少し景気抑制的だ」との見解を示しました。一方、インフレが上昇基調にある中、実質金利は「それほど抑制的ではない」と述べております。

・今年のFOMCで投票権を有するセントルイス連銀のムサレム総裁は9月22日の講演で、インフレが想定よりも持続すると予想した上で「追加利下げ余地は限定的だ」との見方を示しました。また、FRBの現行政策金利水準は「適切」と述べております。

・アトランタ連銀のボスティック総裁は9月23日の会合で、「インフレとの闘いを警戒する責務が我々にはある」と明言。また、関税コストの消費者への転嫁がこれから増えるとの見方を示しました。また、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、インフレ懸念を理由に、現時点で年内の追加利下げの必要性は無いとの認識を示し、インフレ率がFRBの目標である2%に戻るのは2028年以降と予想していると述べております。

・リッチモンド連銀のバーキン総裁は9月22日の会合で、企業や家計は引き続き関税引き上げに対処する中、低い失業率、賃金の上昇、高い資産価格が消費支出を押し上げており、米景気を支えているとの認識を示しました。

・クリーブランド連銀のハマック総裁は9月22日の会合で、インフレ高進リスクに焦点を当てているとした上で、FRBの金融政策において「引き締め撤回は極めて慎重に行うべきだ」と述べております。

・ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は9月19日に公表したエッセーで、インフレよりも「一層大きなリスクは労働市場の急速な鈍化だ」と明言。その上で、自らの政策金利見通しについて、残り2会合で0.25%の利下げを続けることを想定していると述べております。

 

 

 

※豊トラスティ証券株式会社が提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。銘柄の選択、売買価格など投資にかかる最終決定は弊社の重要事項説明書を十分にお読み頂き、投資家自身の判断でなさる様にお願い致します。本資料作成につきましては細心の注意を払っておりますが、その正確性については保証するものではなく、万一その内容に誤りがあった場合、その誤りに基づく障害については当社は一切の責任を負いかねます。