FRBのパウエル議長は1月11日に、自身の昨年の議会証言を巡り、司法省が刑事捜査に関する召喚状を出したと明らかにしました。「(捜査という)前代未聞の措置はトランプ米政権の脅しと圧力継続の一環だ」と反発し、職務継続を表明。「FRBが証拠と経済状況に基づいた金利決定を続けられるか、金融政策が政治的圧力や脅しに指図されるかが問われている」と訴えております。トランプ米大統領はFRBに大幅な金融緩和を求め、パウエル氏の利下げ判断が「遅過ぎる」と繰り返し批判しており、パウエル氏への刑事捜査で圧力を一段と強めた格好。
トランプ米政権は、FRB本部改修工事のコスト膨張を問題視。パウエル氏は昨年6月に、上院銀行委員会の公聴会で、華美な改修工事が行われているとの見方を否定しております。なお、トランプ氏は同7月に、パウエル氏と共に工事現場を視察しております。
パウエル氏は「FRBは議会証言や情報公開を通じ、改修工事について議会に情報提供を続けるためのあらゆる努力を行ってきた」と強調。刑事捜査は大幅利下げという「トランプ氏の好み」に従わなかったためだと断じました。その上で、公務では脅しに直面した際に、断固とした態度で臨むことが時には求められる」と明言。「上院が承認した職務を行い続ける」と、トランプ米政権の圧力に徹底抗戦する構えを見せております。
◆ハセット米NEC委員長、FRBと司法省の独立性尊重
ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は1月12日にCNBCCテレビに出演し、パウエルFRB議長への刑事捜査に関して、FRBと司法省双方の独立性を尊重すると述べ、動向を見守る考えを示しました。
◆主要中銀首脳、議長に連帯示す声明
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁など主要中銀首脳は1月13日に、米司法当局からの刑事捜査を受けるパウエルFRB議長に連帯を示す緊急声明を発表。中銀の独立は「物価と金融、経済を安定させる礎だ」と訴えております。
不文律として互いの政策運営に踏み込まない中銀首脳が他の中銀について発言するのは異例。声明には英イングランド銀行のベイリー総裁、スイス国立銀行のシュレーゲル総裁、カナダ銀行のマックレム総裁らが名前を連ねております。アジアからは韓国中銀が加わったものの、日銀の植田総裁は入らず。
◆共和党内でも異論
パウエルFRB議長への刑事捜査を巡り、「身内」の共和党議員からも経済への悪影響に対する懸念が広がっている模様。下院金融サービス委員会のヒル委員長(与党共和党)は1月12日の声明で、「パウエル氏は率直かつ公平で、極めて高潔な人物だ」と擁護。「刑事捜査は不必要な動揺を招く」とし、後の政権にも響く可能性を警告しました。
次期議長の人事案は一般的に議会上院の銀行委員会と本会議の両方で承認されて成立しますが、銀行委員会は共和が13人、野党の民主党が11人と拮抗。このうちティリス上院議員(共和党)は「(パウエル氏の)法的問題が解決されるまで、次期議長を含めたいかなるFRB理事指名に反対する」と明言しました。
また、グリーンスパン氏のほか、バーナンキ、イエレン両氏の元前FRB議長、ブッシュ(子)政権のポールソン財務長官ら経済閣僚経験者ら13人は連名で「FRBの独立性は経済動向にとって極めて重要だ」と強調。パウエル氏への刑事捜査は「独立性を弱める前代未聞の試みで、新興国における金融政策のやり方だ」とした上で、インフレに悪影響を及ぼす可能性を警告しております。
◆米連邦検事「脅しではない」
米首都ワシントンのピロ連邦検事は1月13日にSNSへの投稿で、パウエルFRB議長に対する刑事捜査は「脅しではない」と強調しました。パウエル氏がトランプ政権による「脅しと圧力」と断じたことに反論した形。
ピロ氏は、改修工事のコスト膨張とパウエル氏の昨年の議会証言に関してFRBに「何度も問い合わせたが、無視された」と指摘。「法的手続きを必要とした」と説明した上で、パウエル氏に「完全な協力を期待している」と呼び掛けております。
◆トランプ米大統領、連邦検事を叱責か
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは1月13日に、米司法省によるパウエルFRB議長への刑事捜査の直前に、トランプ米大統領が連邦検事らに対して、「優先対象」を速やかに訴追していないと叱責していたと報じました。
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