FRBのパウエル議長は10月14日の講演で、政府機関の一部閉鎖が続くが、幅広い指標や情報は依然入手出来ており、それらを踏まえれば「雇用とインフレの見通しは9月の前回会合時点とさほど変わっていない」との見方を示しました。ただ、閉鎖前の指標を踏まえ、米国の成長は「予想より幾分堅調に推移している可能性がある」としました。パウエル氏は州政府や民間のデータ、地区連銀経済報告(ベージュブック)を重視するとしつつ、「政府統計を代替出来るわけではない」と難しさを述べております。
パウエル氏は「モノの価格上昇は、幅広いインフレ圧力というよりも関税引き上げを反映している」と分析。その上で、「雇用下振れリスク増大が、(物価と雇用を巡る)リスクバランスの評価をシフトさせた」と言明。9月会合での利下げが適切と判断した背景だったと説明しました。雇用下振れとインフレ上振れリスクの狭間で、政策運営に「リスクのない道はない」と強調。金融政策は「前もって決まった道に従うのではなく、経済見通しとリスクバランスに基づき設定する」としております。
また、量的引き締め(QT)と呼ばれるバランスシートの圧縮に関して、終了する段階に「今後数ヶ月で達する可能性がある」との見通しを示し、終了の判断に当たっては「幅広い指標を注視していく」と述べております。
なお、FRBはQTについて、物価や雇用の動向に対応した政策金利の操作とは切り離して進めており、仮にQTが停止しても経済への影響は限定的との見方が市場では多いようです。
◆FRB高官の発言
・FRBのボウマン副議長(金融監督担当)は10月14日に開かれたイベントで、「労働市場と経済指標が想定通りに推移する限り、利下げの路線から外れない」とし、「年内にあと2回の利下げが決定されると見込んでいる」と述べ、年内2回のFOMCで共に利下げが決定されるとの見方を改めて示しました。
・FRBのウォラー理事は10月10日にCNBCテレビとのインタビューで、労働市場が「最大の懸念」とした上で、「利下げが依然として必要だと考えている」と述べました。一方で、積極的な金融緩和については慎重な姿勢を示し、経済動向を踏まえてペースを見極める考えを示しております。
・FRBのバー理事は10月9日の講演で、金融政策は「やや景気抑制的だ」との認識を示し、中立的な金利水準へ近づけることが適切と考え、9月のFOMCで0.25%の利下げを支持したと述べました。今後に関しては、不透明感が高い中、物価安定を巡って「重大なリスク」に直面しているとし、「政策調整には慎重であるべきだ」と訴えております。
・NY連銀のウィリアムズ総裁は、10月9日に掲載されたNYタイムズとのインタビューで、FRBによる年内の追加利下げを支持すると表明しました。足元のインフレ率はFRBが掲げる2%目標から遠ざかっているものの、労働市場のさらなる失速を避け、景気を下支えするべきとしております。
・今年のFOMCで投票権を有するボストン連銀のコリンズ総裁は10月14日の講演で、依然として不透明な経済環境において雇用市場へのリスクの高まりが中央銀行の追加利下げを支持するとの見解を改めて表明しました。
・フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は10月13日の講演で、トランプ米政権の高関税政策による物価への影響は長続きせず、金融政策はこの影響を「見過ごすべきだ」と明言。一方で、労働市場の下振れリスクは「法外ではないが著しい」とし、年内2回のFOMCで共に利下げが決定されると予想しております。
また、米株式市場に関して「大部分は活況を呈している」と述べたものの、こうした活況は「概ねひと握りの企業によって主導されているに過ぎない」と、警戒感を示しました。
・今年のFOMCで投票権を有するセントルイス連銀のムサレム総裁は10月10日に、FRBには労働市場を支えるために追加利下げを実施する余地があると述べました。同時に、インフレはなお高止まりしているため、慎重に行動しなければならないとの考えも示しております。
◆ベッセント米財務長官、12月にFRB議長候補3、4人をトランプ米大統領に提示
ベッセント米財務長官は10月15日にCNBCテレビとのインタビューで、FRBの次期議長人事について、「(11月下旬の)感謝祭休暇後、12月には」トランプ米大統領に3、4人の候補を提示したいと述べました。
また、米国の貿易赤字が縮小し始めれば「ドルの支援要因になる」とし、現在の人工知能(AI)ブームなどを背景とする設備投資の活発化に関しては、「設備投資ブームの後には雇用ブームが到来する」と語り、いずれ雇用増につながると予想しております。
◆ブレイナード前FRB副議長、今後2、3会合で若干利下げ
ブレイナード前FRB副議長は10月13日にCNBCテレビとのインタビューで、FRBが今後2、3会合で政策金利を若干下げると予想しました。ただ、政府機関の一部閉鎖で指標が公表されない上に、「米経済動向を読むのが難しい」と言明。「来年の最終的な政策動向を見いだすには、なおも多くの情報が必要だ」と述べております。
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