米下院歳入委員会は5月14日に、トランプ米大統領の看板政策である大規模減税の関連法案を賛成多数で承認しました。「トランプ減税」実現に向けて一歩前進したものの、今後10年で税収が約3兆8000億ドル減少すると試算されております。
トランプ氏は関税収入を財源の当てにしているものの、債務の増大は不可避とみられ、与党共和党の財政規律派は反発を強めております。同党は上下両院とも辛うじて過半数を維持しているに過ぎず、議会審議は難航することが想定されます。
◆米議会、トランプ減税で米財政赤字3兆8000億ドル増加すると試算
米議会上下両院の税制合同委員会(JCT)は5月13日に、トランプ米大統領の「看板政策」である大規模減税の関連法案草案で、今後10年の財政への影響に関する試算を公表。下院歳入委員会が提示した草案を踏まえると、2034年度までに財政赤字が約3兆8000億ドル増加する見込み。
大規模減税法案の草案では、2025年末に失効する大型所得減税が恒久化されます。飲食店従業員らが受け取るチップや残業手当、高齢者向けの税額控除といった、トランプ氏の主な大統領選公約も盛り込まれました。ただ、チップなどの税額控除は2028年度までの時限措置。また、トランプ氏が「ぜひしたい」と述べていた富裕層の所得増税は、見送られております。このほか、児童税額控除の増額や、米国に工場を新設したり、既存設備の更新を行ったりする場合に経費の100%を控除する製造業振興策も含まれております。
JCTによると、こうした減税措置などにより、今後10年の財政赤字は約5兆6000億ドル増加する見込み。そのため、歳出増への対応として、バイデン前政権で実現した電気自動車(EV)をはじめとするクリーンエネルギー促進策を2025年末で撤回。また、私立大学の投資収入に対し、寄付金の多い大学ほど課税率を引き上げるなどの措置を行い、約1兆9000億ドルの歳入増を確保するとしております。ただ、JCTの財政赤字試算は甘いとの見方もある様で、米シンクタンク「責任ある連邦予算委員会」は、大規模減税関連法案が5兆3000億ドルの赤字増加につながるとの見通しを示しております。なお、法案には連邦政府の借入限度額である「債務上限」の4兆ドル引き上げも明記されました。
◆2025年度の米財政赤字、前年度比23%増
米議会予算局(CBO)は5月8日に、2025会計年度(2024年10月~2025年9月)の財政赤字が4月時点で、1兆0510億ドルに上るとの見通しを公表。前年度同時期から23%増加した計算となります。
歳出は9%増の4兆1610億ドルの見込み。生活費調整による社会保障給付金の支出増のほか、医療保険関連の支出も増加。債務の増大を背景とする国債利払い負担も11%増となり、引き続き重荷となっております。
一方、歳入は5%増の3兆1110億ドルと見込んでおります。所得税収が7%増。関税を含めた雑収入が21%増の1550億ドルで、うち関税が32%増の見込み。
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