NY金(中心限月、日足)

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先週のNY金(中心限月)は、前週末比9.2ドル高の1851.3ドルで終了。ドル指数が1ヶ月ぶり安値、米長期金利が4月以来の低水準となる中、見直し買いが入り始めた様です。5月19日に200日平均線を上抜き、5月24日に5月11日以来の1850ドル台を回復。一時1869.1ドルまで買い進められる場面も見られております。その後、再び1850ドルを割り込んだものの、200日平均線をサポートに下げ渋り、再び1850ドルを上回って終了しました。

FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨(5月3、4日開催分)が公表され、「大半の参加者」がインフレ抑制のため、6、7月に連続0.50%の大幅利上げを支持していたことが明らかとなりました。ただ、連続0.50%の大幅利上げは市場で既に織り込み済みであったため、市場への影響は限定的だった様です。

その後、5月27日に発表された4月米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比6.3%上昇と、依然記録的な高水準だったものの、前月(6.6%上昇)から伸びが鈍化。約1年半ぶりに減速に転じました。

4月米消費者物価指数(CPI)の伸び率も、前月から8ヶ月ぶりに減速しており、インフレはピークを過ぎたとして、FRBの利上げペースが鈍化するとの見方が拡がり始めております。なお、FRBによる急速な金融引き締めが米景気を冷やすとの見方が拡がる中、9月以降の利上げについてはFRB内でも意見が分かれている模様。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁やシカゴ連銀のエバンス総裁が通常の0.25%の利上げ幅に戻す可能性を示す一方、セントルイス連銀のブラード総裁は0.50%以上の利上げ継続を示唆。アトランタ連銀のボスティック総裁は「9月に利上げを一時停止するのが理にかなう」と発言するなど、インフレ次第で利上げペースの減速も加速もあり得る状況です。

インフレがピークを過ぎたかどうかは、今後継続的にインフレ率が低下して行くのを確認する必要がありそうですが、5月米総合PMI(購買担当者景況指数)速報値が4ヶ月ぶり低水準まで低下、米ミシガン大学が発表した5月米消費者景況感指数(確報値)も、2011年8月以来約11年ぶり低水準に落ち込むなど、利上げの前提だった米国の好景気に陰りが見え始めております。

そのため、「スタグフレーション」に陥るとの懸念が再燃する中、「安全資産」として金を保有する動きが出始めている様です。なお、後述の様に、世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDRゴールドの金保有残高は増加傾向にあります。

NY金のネット・ロング

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とは言え、今回の反転は売り方のショートカバー(買い戻し)が主体だった様にも見えます。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、大口投機家のNY金のネット・ロングは5月24日時点で8453枚増加の18万3813枚となり、6週ぶりに増加に転じました。内訳を見てみると、ロングは同809枚減少の28万2202枚と、6週連続で減少した一方で、ショートも同9262枚減少の9万8389枚と、8週ぶりに減少に転じました。

今週末は、5月米雇用統計が発表されます。市場予想では日農業部門雇用者数は前月比35万人前後とみられており、前月(速報値、43万人)から伸びが鈍化する見通し。市場予想を下回り、景気の減速懸念が一段と強まる様だと、本格的に「安全資産」として買われ始める可能性がありそうです。

その場合、1900ドル超えを試す可能性がありそうですが、目先は引き続き200日平均線を維持しつつ、4月18日の高値2003.0ドルから5月16日の安値1785.0ドルの下げ幅をフィボナッチ・リトレースメントで見た場合の38.2%戻し水準1868.3ドルを終値で上回れるか注目されます。

SPDRゴールド・シェアの金保有残高

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最後に、世界最大の金ETFである「SPDRゴールド・シェア」の金保有残高は5月27日時点で1069.81トン。前週末比6.38トン増と、2週連続で増加となっております。

世界第2位の金ETFである「iシェアーズ・ゴールド・トラスト」は前週末比0.53トン増加の518.69トンでした。

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