NY金(中心限月、日足)

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先週のNY金(中心限月)は、前週末比28.3ドル高の1791.2ドルで終了。3週連続で上昇となりました。ドル下落に伴い、相対的にドル建て商品に割安感が生じる中、売り方のショートカバー(買い戻し)を中心に買い進められて、8月4日に終値ベースでは7月1日以来約1ヶ月ぶりに1800ドル台を回復しました。ペロシ米下院議長の訪台に反発する中国が台湾周辺の海域で軍事演習を開始するなど、台湾を巡る地政学リスクの高まりから「安全資産」として買う動きも強まった様です。

7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、パウエル議長が今後の利上げについて経済指標に機動的に対応するとしつつ「ペースを緩めることが適切となる可能性が高い」と発言したことを受けて、米長期金利が低下していることも価格の下支えとなった模様。

前週は複数のFRB高官がインフレ抑制は道半ばだとして利上げ継続の必要性を主張。ボウマンFRB理事は、高インフレを目標の水準まで抑えるため、今後の金融政策会合では0.75%の追加利上げを検討するべきだと主張。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、9月のFOMCでは0.50%利上げが「妥当」と表明。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、来年にも利下げに転じるとの観測について、「可能性が極めて低いシナリオだ」との見解を示しております。

 

米雇用統計

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そんな中、先週末に発表された7月米雇用統計(季節調整済み)で、景気動向を敏感に反映する非農業部門就業者数は前月から52.8万人増となり、増加幅は前月(改定値、39.8万人)から大幅に増加。市場予想(25.0万人)も大幅に上回りました。失業率も3.5%と、前月から0.1ポイント低下(市場予想は3.6%)。注目された平均時給は前年同月比5.2%増と、前月(5.2%増)と変わらずだったものの、前月比では0.5%増となり、前月(0.4%増)から伸びが加速。市場予想(0.3%増)も上回りました。

好内容の米雇用統計を受けて、米景気先行き懸念が後退する中、FRBが7月に続き、9月も通常の3倍の0.75%の利上げを実施するとの見方が再燃しております。

そのため、今週は上値の重い展開が続きそうです。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、大口投機家のNY金のネット・ロングは8月2日時点で3万1636枚増加の12万4326枚となり、6週ぶりに増加に転じましたが、内訳をみるとロングは同467枚増加に留まった一方、ショートは同3万1169枚減少となっており、売り方のショートカバーの動きが大きかった様です。

後述の様に、世界最大の金ETFである「SPDRゴールド・シェア」の金保有残高は1月20日以来の1000トン割れとなるなど、投機資金の流入は乏しく、このまま切り下がって来ている50日平均線でレジスタンスを受ける様ですと、1750ドル付近まで下げることも想定されます。

ただ、世界景気の減速懸念や、台湾情勢を巡り、米中対立が激化するとの懸念が強まる中、押した場面では引き続き「安全資産」として買い拾われそうです。

今週は、8月10日には7月米消費者物価指数が発表されます。市場予想では前年同月比8.7%増と予想されており、前月(9.1%増)から伸びが鈍化する見通し。

 

SPDRゴールド・シェアの金保有残高

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最後に、世界最大の金ETFである「SPDRゴールド・シェア」の金保有残高は8月5日時点で前週末比6.71トン減少の999.17トンと、7週連続で減少。8月5日に1月20日以来の1000トン割れとなりました。

世界第2位の金ETFである「iシェアーズ・ゴールド・トラスト」も前週末比2.29トン減少の498.81トンと、10週連続で減少。8月4日に2月28日以来の500トン割れとなりました。

 

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